※この先には、オリジナルな解釈に基づくキャラクターが登場します。
私流のお題の解釈と言うことで、寛大な心にて接してくださいますことを切に願います。
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………私、八雲 藍は今、何ゆえか外界に居る。
そして、何ゆえか知らぬが外界の球技のコートに居る。
更に、これから「バスケットボール」なる競技に、人間に混じりつつ参加しようと言うのだ。
……なんと滑稽な光景だろうか。それもこれも皆、数日前の出来事が発端なのだが…
数日前…それは何時もと変わらない日だった。
そう、何時ものように幻想の境に取り込まれ、人間が流れ着いてきた。
だがその人間は何時もより多少運が良かったらしく、無傷で家の直ぐ近くまで来たのだった。
外界の少女。年の頃は十台前半から半ばと言うところだろうか。
何時もの出来事、何時もどおりに帰せばよいと思っていた。
「あれー、藍さま、いつの間に二人になったの?」
橙の一言で気が付いた。
その少女は、私と同じ背格好、そして同じ顔をしていたのだったのだ……
〜ベストプレイヤー〜
少女は「ミドリ」と名乗った。
外界を厭いて、そして気が付いた時には幻想郷に到達していた…とは彼女の言である。
…元々霊力の高い性質であるのだろう。時々こう言う人間も居ることがあるのだ。
「ミドリ、何が嫌でここへ来た?」
「何が、って……今度ある試合に出るのが嫌だったから…」
「ふむ、試合?」
「……バスケットって言って、わかるかしら……」
「ばすけっと?」
…勿論、聞いた事などある筈もない。
首をひねっていた時に、彼女が急にこんな事を言い始めたのだった。
「そうだ、あなた、私と同じ顔なんだから代わりに試合に出てよ!」
……考えてみれば、私と彼女が同じ顔なら、彼女と私も同じ顔なのだった。
試合の前の整列。人間に混じって一人…いや、一匹狐が混じっているなど誰が想像するだろうか。
簡単な人化の術をかけているため、並の人間には耳と尻尾は見えはしないはずだ。
……いや、正確には見えているのだが気付くことのないはず…と言えばいいだろうか。
久しぶりに式を外されているだけに、私も何となく何時もと違った気分になる。
そう、式を外されたのも一体どれだけ振りである事だろうか…
「あら、藍。そう言うことなら式を外した方がいいわね。」
「何故でしょうか、紫様?」
「…人間の中へ行くんでしょう?無理に強大な妖力を持ってると色々不便じゃないかしら?」
「はぁ…まぁ、そうですが……」
「…ってわけで、外すわよ?」
……一気に力が抜ける感覚がある。
それと同時に自分の中で何かが落ち着いていく。
「……へぇ、変わったものねぇ…式っていうの?」
「まぁ、ね。それよりミドリ…だったかしら、あなた?」
「ん、何?」
「藍のこと、試合に出られるようにこれから鍛えてあげてくれないかしら?」
………それから数日は、地獄のような特訓が続いた。
「じゃあ、特訓を……って、何やってるわけ?あんた…」
「え………?」
「藍さま、ボールにじゃれちゃだめだよ〜」
「式が外れたからって野生に戻らなくたって…」
「…今度こそ…ボールをパスするわ、受け取って!」
「………!」
「藍さま、ボールを避けちゃだめだよ〜」
「し、しまった……つい弾幕ごっこのクセが……」
こうした厳しい特訓の末、結局私はミドリの代役を務めることになってしまった。
バスケットボールの基礎はおおよそわかったつもりだ。
だが……うまくやれるだろうか…不安がのしかかる。
そっと観客席を見ると、紫様と橙がこちらを見ている。
橙は流石に人化の術を上手く使えないので、頭からフードを被って縮こまっている。
そして紫様はと言うと……これだけの中でも静かに落ち着いていらっしゃる。
何時もと変わらない雰囲気に、つい私の頬も綻ぶ。
試合開始の笛が鳴る。
そして、弾かれたように動く。
チームの皆は、私の…ミドリの異変に気付かないようだ。
ボールが私の元に渡る。そして、相手をかわし、ゴールへ向けて、投げる。
静かに音をたてて、ボールはリングに吸い込まれた。
……これで一点…簡単なものだった。
着慣れない短袖の服に、汗が光り始めたその時のことだった。
試合は続く。
ボールを受け取って、ゴールへ投げる。
それだけの作業は永き時を生きた私にとって簡単なものだ。
……だったが。
ボールが徐々に渡らなくなってきた。
逆に、ボールが全て奪われてしまう。
流石に私も焦り始めた。
どうすればいい?
焦れば焦るだけペースは乱れ、試合は相手に奪われていく。
前半が終わり、そして……ベンチに戻った私を待っていたのは、橙だった。
「………」
「橙、済まない……私には、彼女の代わりをすることが出来ない…」
「………」
「彼女は、間違いなくこのチームに必要な人材だ。幾ら技が優れていても、それではどうにもならない。」
「藍、どうしてそう思うのかしら?」
現れた紫様に、私はこう答えた。
「……人は…妖怪も…誰も誰かに必要とされています。本当にそこにあるべきは他の人では代わりは務まらない。そしてそれは…この競技
では致命的な違いになります……」
「……と、言うことよ。わかったかしら?」
「……ええ……じゃあ…」
帽子を上げた橙……
そこに居たのは、ミドリだった。
「よし、行くよ、みんな!!」
後半戦に入り、ミドリを取り戻したチームはまさに水を得た魚の如く勢いを取り戻していった。
その姿を遠くに見つつ、私と紫様はその場を離れていったのだった。
「……紫様、どうしてあなたがまた今度のようなことを?」
「あら、どう言うことかしら?」
「ミドリを手引いて、そして今回みたいに私の奮闘振りを見せさせたのは紫様のお考えと言うことくらいは存じておりますが?」
「あら〜…?なんのことかしら………?」
「……今回苦労させられたのは、私なんですが。それくらいお教え頂いても良いのではないでしょうか?」
「…………………」
「…紫様!!」
「…昔ね、友達が居たのよ。自分が誰にも欲されていないと思って、命を絶った友達がね………」
それ以上は、聞けなかった。
その時の紫様の顔を、私は恐らくこれからこの時のミドリとの出来事とともに忘れないと思う。
「……さて、藍。そろそろ式を戻しましょうか。」
こうして私には再び式が憑き、そしてまた何時もの繰り返す日常が始まったのだった。
もう一度外界へ出る事があるだろうか…その時にあのミドリはうまくやっているだろうか…今でも時々思い出す出来事である。
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時間がないので、推敲できないですが…このまま投稿してしまいます。
全然考えなしに書いてますので、かなり微妙なのですが一つお願いします。
あ、一点コメント。
式が外れてるってのは実はいろんなことの伏線だったりします。
お暇な方は考えてみてくださいませ。
ヒントは、『式とはパターン化』と言う事ですね。